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2005年 2/18
湯浅卓雄 指揮=ロンドン・フィル定期公演 レポート Vol.2
湯浅が近いうちに再びロンドン・フィルを指揮することを願っている。
とても素晴らしい組み合わせだ。

アレックス・ラッセル Seen and Heard Concert Review オリジナル原文
ドビュッシー、ラヴェル、シベリウス
アナ=マリア・ヴェラ(ピアノ)
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
湯浅卓雄(指揮)
ロイヤル・フェスティヴァル・ホール
2005年2月4日

 一見、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(LPO)の十八番ともいえるお馴染みの古典プログラムには目新しいものはないように思われたのだが、湯浅卓雄の指揮によってこれらの作品が、驚くほど新鮮なものとなり、まるで新しく作り変えられたようだった。
オーケストラも彼の指揮に温かく応え、終始緻密で堂々とした演奏を聴かせた。
 クロード・ドビュッシーの「海」はしばしば、優れたオーケストラがその技術を華々しく披露する作品であるような誤った捉え方がされるが、湯浅は室内楽のような親密さとデリケートな透明性をLPOから引き出した。
オープニングの「海の夜明けから真昼まで」は瞑想的で蒸留され、淡い明かりの中の雰囲気をかもし出していた。
ミュートされたトランペットは夜明けの海にかかる灰色がかった白いもやを表現した。
この楽章は大音量で、密度の濃い、過剰に膨れ上がった演奏がされがちであるが、LPOの演奏は、オーケストラのひとつひとつの楽器が輝きを放っていた。
「波の戯れ」では、湯浅は透き通った質感と弾むようなリズムを生み出した。
雰囲気ががらりと変わった最終楽章の「風と海との対話」でも、LPOは激しさとドラマを盛り上げながらも、クライマックスでのオーケストラの精細なディテールをかき消してしまうことはなかった。
これ以上に雰囲気のある、ドラマチックで繊細な「海」は想像し難い。
 ピアニストのアナ=マリア・ヴェラのラヴェル、ピアノ協奏曲ト長調は、最初から最後まで単調の一語に尽きる。
彼女の演奏は典型的な「ミシン型」ピアニストのそれであり、色彩に欠け、機械的。詩心も情熱もない。
オープニングの「アッレグラメンテ」のフレージングにはなめらかさがなく、ひとつひとつの音がブツブツと切れ、ひっかいたように聴こえた。
全体を通して、彼女の平凡な演奏は美的というより運動競技的で、それは音楽性ではなく筋骨のたくましさを感じさせるものであった。
それとはまったく対照的に、オーケストラは個性と詩的感性に満ち、特にハープの絶妙な演奏、木管の快活な独奏は際立っていた。
「アダージョ・アッサイ」での無感情なヴェラの演奏は荒く硬い音色で、求められる優雅さや鋭さに欠け、オーケストラの繊細な演奏がなかったら、まったく面白みの無いものになってしまっていただろう。
「プレスト」でも、オーケストラの精力的な演奏、堂々とした落ち着きが、かえってヴェラの退屈な音と無菌状態のフレージングを強調させていた。
 湯浅は、シベリウスの交響曲第1番では、その構成を完全に把握し、スコアに厳格なまでに忠実に、しかも真のシベリウス・サウンドのもつゾクッとするようなムードを維持しながら指揮することによって、最高のシベリウス理解者であることを証明した。
 はっとするほど冷たいクラリネット独奏で始まった「アレグロ、マ・ノン・トロッポ」のテンポの展開は素晴らしかった。
演奏が進むにつれて早まる鼓動。湯浅は弦から鋭く刻んだ張り詰めたリズムを引き出し、叙情的なハープと鮮やかに対比させた。
この楽章を前へ前へと推し進めるティンパニー奏者は、全体を通して重要な要素となっており、サイモン・キャリントンの演奏は素晴らしい鋭さをもっていた。
「アンダンテ」での湯浅の指揮は深い感情と理解の上に立ち、それは私がこれまでに聴いたことの無いような、このスコアのもつ準ロマン主義の暗黒の深淵を射抜くものだった。
それとは好対照をなすのが「スケルツォ」で、軽快な優美さが感じられた。
特に木管の独奏は実に堂々としていた。第1楽章同様、「フィナーレ」のオープニングは正確に測られ、熟慮され、チェロの演奏には粒子の重さが感じられた。湯浅はゆっくりとテンションとエネルギーを高めて行った。
豊かで瑞々しい弦によってクライマックスへと導き、ついにキャリントンのドラマチックなティンパニーが鳴り響いた後、静かなロールがやがて静寂へと消えていった。
 満場の聴衆は、この輝ける演奏に喝采を贈った。
 そして奥ゆかしいこの指揮者は、その称賛をオーケストラと分かち合おうと苦労していた。
 湯浅が近いうちに再びLPOを指揮することを願っている。とても素晴らしい組み合わせだ。
(アレックス・ラッセル)
 
 
 
 
 
 
湯浅卓雄
ロンドン・フィル リハーサル風景
2005年2月4日ロイヤル・フェスティバルホール
 
     
     

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