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ブラームス交響曲 全曲チクルス インタビュー (2005/5/9) モーストリー クラシック 2005年11月号 レコード芸術 2005年9月号 クラシック ニュース インタビュー |
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| 湯浅 卓雄 インタビュー | ||||||
| ブラームス 交響曲全曲チクルス インタビュー 指揮者・湯浅卓雄に音楽評論家・響敏也氏が聞く |
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指揮者・湯浅卓雄が大阪センチュリー交響楽団を率いて今秋、ブラームス交響曲全曲チクルスを行います。湯浅は、アバドやメータなどの名指揮者を育てた名教授、ハンス・スワロフスキー氏や鬼才、イーゴリ・マルケヴィッチ氏らに学びました。そしてN響の名誉指揮者としても有名だった巨匠、ロヴロ・フォン・マタチッチ氏のアシスタントを長年務め、現在はロンドン・フィルをはじめとする世界各国のオーケストラに常時客演しています。音楽評論家の響敏也氏が湯浅と大阪のとあるレストランで対談、同氏の音楽への情熱とその活動を聞きました。 響敏也氏(以下敬称略):いつもお忙しいですが、今回の帰国の直前は、どんな演奏会を? 湯浅卓雄(以下敬称略):直前は、アルスター管弦楽団で北アイルランドでの演奏会かな。 実は、帰国前に演奏会がたくさんあって直前がアルスターかな。これは面白い企画で、オーケストラとその地域の人たちと年一回、一緒に演奏する演奏会なんです。 響:クラシック音楽のファンを広げるのにピッタリの企画ですね。 湯浅:年々、応募者が増えて、お断りするのが困るぐらい。で、アルスターの直前がフィンランドのラハティ交響楽団。シューマンの1番、ペルトの3番、マーラーの「亡き子をしのぶ歌」。 響:陰にこもりそうな、シブいプログラムですね。 湯浅:いやいや、でもシューマンの1番のタイトルは「春」ですから。あ、でもシブいかな。現地は4月なのに雪降ってました。もう4月だしシューマンのシンフォニー1番の「春」は、とてもふさわしいプログラムと思ったのですけど。練習の時、「皆さん私、春だと思ってプログラムに入れましたが、ここはまだ冬ですね」と言ったらみんな「ウーン」といいながら、とても明るい演奏してくれました。表情をイギリス人みたいに顔にださないのでクールに見えるんですが、心の中は熱い人たちでした。出てくる音がとても熱かったです。 響:今年でデビューから30年近いですね。最初の頃に、自分でこういう棒が振りたいなと思っていたのと比べて、今はどうですか? 湯浅:違いますね。今までは一生懸命振ってましたけど、余分な力が抜けたというか。最初は分からないから一生懸命やってますけど、その一生懸命やるがゆえにオーケストラが聞こえないときがあるんです。自分のことで精一杯!そういうのはなくなりましたね。一生懸命振ってるけれども耳は涼しい。 響:演奏に集中するのだけれど、それを覚めて観ている自分がいると? 湯浅:特に耳です。オケの演奏がどうであったか判断しないとだめですから。 スワロフスキーは、「指揮者が汗かいている間はダメだ」って言ってましたね。ですがクールな棒を振るというのにはなかなかなれませんね。最終的にはそこに到達すべきでしょうけど、最初は汗をかかないと汗をかかないですむ喜びが分からないじゃないですか。それはサー・コリン・デイヴィスも言ってました。「若いころは一生懸命振ってたけれど、今はやらない」って。それをやってない人は、振らないことによる満足感は分からない。若い時は若いなりに一生懸命やっておかないと。 響:10年、20年と自分が特定のオケの責任ある地位にいて指揮活動するというのも魅力でしょうし、初めてのオケと短時間のうちに自分の音楽を作るという仕事もスリリングでしょう。将来はどちらを? 湯浅:どうでしょう。将来、自分の好きな、気の合うオケが、それはひとつといわずあってそこへ定期的に行って、「また来ましたよ」ってやるのが理想です。同じところで同じ曲を同じオケでやる、のはオケも私も両方に産みの苦しみがありますね。アルスターでは首席客演指揮者という立場ですけど、最高の位置だと思っています。もうそろそろどこかのオーケストラに首席指揮者や音楽監督として腰を据えてもいいかな、という気はしますけど、まだ演奏旅行が楽しいですから。いろんなところへ行って、いろんなオーケストラとの巡り会いがあって・・・。 響:巡り合いといえば最近、大騒動があったんでしょ?尾高(忠明)さんがやっていたBBCナショナル・ウェールズ管弦楽団・・・。 湯浅:ああ、そうですね(笑)。4月8日にスウェーデンで話が来まして。その時、イェーヴレ交響楽団と仕事をしていたんです。プログラムはドヴォルザークの5番でしたね。 響:またっ、シブい曲を。 湯浅:でしょう?日本でほとんどやりませんよね。ゲネプロ(リハーサル)が終わってホテルに戻ろうと事務所によって・・・。その時に「BBCが危機だ、指揮者が来ない」と聞いて。 |
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| 響:本来の指揮者は誰でした? 湯浅:リチャード・ヒコックスさんです。彼が急病で、『ぜひ来てほしい』と。スケジュールは、スウェーデンの翌日からさっき言ったフィンランドに行く日までのちょうどその期間が彼らのツアー日程だったんです。(BBCの)プロデューサーとかみんなの困っている顔が浮かんでね。プログラムは2パターンあって、エルガー(の交響曲)2番とラフマニノフの「交響的舞曲」がそれぞれのメイン。公演当日の昼、楽譜は現地入りしたホテルにオケが用意していてくれて部屋でざっと見て3時にリハーサル。そして、その夜の8時に演奏会。そのあとは5日間連続公演で最後の日がウィーンのコンツェルトハウス。そのあくる日がさきのラハティ交響楽団とシューマンの交響曲1番などのリハーサルでした。 響:BBCとのプログラムは、ほとんど初見に近い形でしょ?知っている曲であっても。 湯浅:ラフマニノフについては10数年楽譜は見ませんでした。本番は、一か八かみたいなところもありました。ラフマニノフは変拍子が多いので一拍でも振り間違えたら、大変です。だから1日目はまず安全運行で彼らが自分たちの力を出せるようにととても気を遣いましたね。 響:気は遣われましたけど、達成感はあったでしょう? 湯浅:おかげさまで(笑)。あー無事すんだって。 響:しばらくヨーロッパでも語り草になるでしょうね。そろそろブラームスの話に入りましょうか。まず「えーっ?」と思ったのが、曲並べ。シンフォニーを第1番と第2番、そして第3番と第4番という組み合わせでやるとは。それぞれ1回分のカロリーが高い。 湯浅:うん、たぶんね。たとえば1番と2番くらべると2番のほうが軽い、3番と4番だと3番のほうが軽い、というのがありますよね。演奏会が4回あれば協奏曲などと組み合わせて1番,2番、3番、4番とやるんでしょうけど、2回でやろう、ということなので、これだったらブラームスが作曲した順番にやろうと。 響:じゃ、当日は第1番の次に第2番? 湯浅:そういうこと。変に演奏順をかえると印象を与えるでしょう?2番より1番のほうが大曲なのか?、いい曲なのか?、とか。ある意味では、そういう考え方もあるかもしれないけれど。シンフォニストとしてのブラームスの足跡をみることによって彼がいかに変遷していったか、たとえば1番を書いたがゆえに2番はこうしたとか、そういうことが分かると思う。 響:特に第1番と第2番の場合、本当に双子みたいにして生まれた曲ですから。第1番の、ものすごく重苦しい緊張感のあとに解放された心境で、こんな晴れやかな曲を書いたんだっていうのが、続けて聴くことで初めて解るでしょう。 湯浅:そうですよ。前半ちょっと重苦しかったけど、後半はちょっとなんとなく軽くなって踊り出したくなるような感じで終わって。その後味というものは、感じられるだろうと思うし、それプラスブラームスもそう感じて作曲したのだという親近感とその作品番号に対する親近感も出てくるんじゃないかと思いますね。 響:ブラームスの創作過程を、聴きながら追体験できる。でも今までの演奏会で、第1番と第2番という順番では聴いたことがないんです。お客さんも貴重な機会ですね。 湯浅:そうですね、並べて聴くというのはね。 響:今、音楽が「ながら聴き」みたいな方向へいってるじゃないですか。何かしながらヘッドフォンステレオで聴くのだけど、一度音楽に向き合って真正面からひたってみるという体験も必要ですよね。音楽って、そういうものだから。思いっきり音楽と真正面から向き合うという意味では、ぴったりの演奏会ですね。 湯浅:あと、松方ホールのサイズね、それもひとつメリットだと思いますよ。たとえば1000人ぐらいのホールでやったら、お客さんは遠くで「1番と2番をやってる」とちょっとよそ事のようになるけど、松方ホールだとお客さん自身がその中に巻き込まれないではすまされないですからね。そうすると音楽と向かい合うほかない。そう意味で覚悟している人に来てほしいというのもありますよね。 響:第3番と第4番の日にしても、第3番が勢いよく始まって最後は消え入るように終わるでしょう。次に第4番の切ない開始が来る。そのつながりは絶妙ですね。 湯浅:そうですね。そのつながりをも感じることができる非常にユニークで、ある意味では非常に意義のある企画だと私はそう思いますね。私にとって全曲演奏会は初めてで、ブラームスは大切にしている作曲家のひとりで、ある意味金字塔のような機会になるのではないか、と思っています。ぜひ多くの人にその瞬間に立ち会ってほしいですね。 (2005年 5月9日 大阪市内にて) その他のインタビュー ●モーストリー クラシック 2005年11月号 ●レコード芸術 2005年9月号 |
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