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湯浅 卓雄 CDレヴュー

NAXOS ナクソス(オンライン・ショップ)

Classical CD Review 8月号 “今月の特選盤”

アルテュール・オネゲルはスイス人の両親のもとにル・アーブルで生まれ、チューリッヒ音楽院とパリ音楽院で学んだ。彼の初期の作品はパリで評価されるようになり、1920年頃には作曲家6人組の一人として知られるようになった。しかし、6人組がサティに感化された芸術観をもっていたのに対し、もっと深刻な表現に傾倒していた彼の芸術観はそれと対立するものであった。曰く「祭やミュージックホールにはまったく興味がない。最も真剣で厳格な形の室内楽がやりたい。」
オネゲルの交響曲は20世紀の交響楽において非常に重要な意味をもつものであり、中でも「典礼風」として知られている交響曲第3番はその代表的なものである。この作品はコンサートホールでの演奏より録音の方で素晴らしい演奏が残っているが、カラヤン指揮ベルリン・フィルハーモニーがその演奏のひとつの水準を作り上げた。カラヤンの解釈は気品に溢れ、ベルリン・フィルの演奏は繊細さと微妙な音色を描いており、これまでに作られた他のどの録音と比べても群を抜いて素晴らしい。もちろんこの作品自体には、どんな演奏であっても、その限界を超えるような力強さがあるのだが、それでもなお、一つの録音を推薦するとなると、やはりカラヤンとなろう。
しかし、たとえそうであっても、ナクソスからのこの新しい録音は圧倒的な演奏を聞かせていて、このレーベルでのベスト・レコーディングのひとつに数えられよう。第1楽章「怒りの日」は襲い掛かるような演奏と、それを裏付けるオーケストラの統制が見られる。そこそこにホルンの荘厳な響きが聞かれ、圧倒的でエキサイティングな効果を生み出している。それとは対照的な第2楽章「深き淵よりわれ汝を呼ぶ」は正真正銘のアダージョである。カラヤン同様湯浅は集中力のある演奏でゆっくりとしたテンポを維持している。この緩徐楽章には、多くの録音でも聴かれるように、テンポが速くなりがちであるという危険がある。しかし、この録音ではその過ちがない。そして、ここでも湯浅はフレージング、テンポ、ラインに対して確固とした洞察と判断をもっている。そしてまたここでもオーケストラは湯浅とオネゲルのメッセージをしっかりと伝えている。その演奏は素晴らしく、それだけでもこのCDを購入する価値がある。
このCDには4つの小品がボーナスとして収録されている。1920年代の機関車を模した作品「パシフィック231」、「交響的楽章(交響的運動)第3番」、交響詩「ラグビー」、趣のある「夏の牧歌」である。中でも「夏の牧歌」は直接訴えかける力があり、それゆえに今日もっとも頻繁に演奏される作品となっている。この録音でも、非常に趣のある演奏が聴ける。
「パシフィック231」は有名であるにもかかわらず、めったに演奏されることのない作品である。「ラグビー」や「交響的楽章(交響的運動)第3番」と同じように、作品の展開に交響楽的なコントロールを用いるオネゲルの真髄が見られる。音の美しさで耳を魅了しようという意図のないこの作品は、演奏家に大きな責任を負わせるものでもある。しかし湯浅とニュージーランド交響楽団はこのCDの中で、それぞれのイディオム、それぞれの作品への深い理解を示している。
オネゲルは20世紀を代表する作曲家の一人であり、彼の意図はこのCDでしっかり満たされている。
テリー・バーフットイギリス・グラモフォン誌 2004年10月号




オネゲルのオーケストラ・サウンドの世界を理想的に披露

交響曲第3番 「典礼風」
パシフィック231
ラグビー
交響的楽章 第3番
夏の牧歌
湯浅卓雄指揮 ニュージーランド交響楽団

 
カラヤンによるオネゲルの交響曲第3番(1945年)の録音は、この作品の演奏を評価する上での基準ともなっている。第2次世界大戦に対するオネゲルの怒りが表現されているこの録音は、交響曲第2番(1941年)とのカップリングで、再版が繰り返され、彼のクラシック作品の代表的存在であり、今も世界中で賞賛されている。この作品の録音には強敵が揃っている。ヤンソンスは同じ作品のカップリングでカラヤンに劣らぬ堂々とした指揮ぶりを聞かせている。デュトワの1980年代のバイエルン放送交響楽団との録音はパワフルなコンプリート・チクルスの一部となっている。最近ではファビオ・ルイージもチクルスの一環として録音しており、以前このページで高く評価されている。湯浅卓雄もまったくひけをとらない。オープニングから美しい録音であり、このドラマチックなスコアに湯浅の独自性を出している。「怒りの日」と「われらに平和を与えよ」での湯浅のペーシングはぞくぞくさせるものであり、その間の「深き淵よりわれ汝を呼ぶ」は一変して、素晴らしい管楽器の演奏により、美しく奥深いものになっている。湯浅にはカラヤンやヤンソンスほどの激しさがないとしても、ルイージに匹敵する素晴らしい演奏を聞かせている。
湯浅は他のどの演奏家と比べても、オネゲルのオーケストラ構成に息づくプロコフィエフの流れをもっともはっきりと強調している。特に「ラグビー」と「交響的楽章」の第3番でそれが顕著となっている。「パシフィック231」(これもまたクリスタルのような明瞭さをもった録音である)は例外である。湯浅のエンジンがヤンソンスのような非常にパワフルな演奏と比較して若干パワーに劣っているとしても、湯浅のアプローチには爽やかな現実性があり、単なる音のスペクタクルではなく、音楽そのものを披露している。湯浅のとった曲順も興味をそそるものである。抽象的な作品である交響曲第3番に一味違った光を当て、それを中心に置いている。「パシフィック231」を前奏曲ではなくフィナーレで聴くのは、盛り上がりを感じさせる印象を受ける。「交響的楽章」では、湯浅とルイージの間に差をつけるものは見当たらない。デュトワは音質の点で不利な位置に置かれよう。湯浅は「夏の牧歌」でさらに魅力を引き出し(たとえデュトワほどではないとしても)、プログラムを魅惑的に締めくくっている。湯浅とニュージーランド響の組合せで交響曲第4番 『バーゼルの喜び』の録音を期待するのは欲張りであろうか。

 



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