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シューマン
交響曲全集

ブラームス
交響曲全集

日本作曲家選輯
芥川 也寸志


オネゲル:
交響曲 第3番
「典礼風」


日本作曲家選輯
諸井 三郎


日本作曲家選輯
黛 敏郎


日本作曲家選輯
別宮 貞雄


ハーティ:
ピアノ協奏曲、
幻想的情景、
コメディ序曲


日本作曲家選輯
矢代 秋雄


日本作曲家選輯
山田 耕筰
「かちどきと平和」他


日本作曲家選輯
山田 耕筰
「長唄交響曲」他


日本作曲家選輯
大木 正夫



 
湯浅 卓雄 CDレヴュー
ブラームス:交響曲全集
湯浅卓雄
(指揮)大阪センチュリー交響楽団(管弦楽)
 
◆交響曲 第1番 ハ短調 op.68
◆交響曲 第2番 ニ長調 op.73
◆交響曲 第3番 ヘ長調 op.90
◆交響曲 第4番 ホ短調 op.98

2005年11月3日・20日 神戸新聞松方ホール ライヴ録音

(WWCC7517〜9)

Live Notes ナミ・レコード(オンライン・ショップ)
     


クラシックニュース 江藤 光紀:CD、問はず語り(その33)

 ずっと関東圏で暮らしてきた私からすると、大阪はちょっと変わった、謎めいた文化圏である。在京以外のオーケストラが東京でコンサートを開くと、たちまち「地方オーケストラ」なんて銘打たれてしまうが、大阪人は、そのことを決して快く思っていないはずだ。中央=東京vs地方=それ以外、というヘゲモニー図式に収まらない、独自の文化的アイデンティティが、大阪を大阪たらしめている。関東の住人はアイデンティティが薄いから、これはある意味、うらやましいことでもある。
 
 音楽界においてこの文化的アイデンティティは、朝比奈隆&大阪フィルの演奏するベートーヴェンやブルックナーによって担保されていた。後任には、主に海外で活躍し、東京の色に染まっていない大植英次が座ったが、彼は朝比奈と演奏スタイルが似ているため、大人気である。
 
 ところで、ここに新たなダークホースと思われるコンビが出現した。湯浅卓雄と大阪センチュリー交響楽団である。湯浅も海外活動経験が長く日本ではずっと無名で、東京色に染まっていない。
 
 この両者の入れたブラームス全集、細かいことをいえば気になる点もあるが、妙に熱い。熱風が吹き荒れている。この魅力は、ライブ音源だから、というだけでは説明しきれない。アンサンブルの微細なずれなど、どこかにすっ飛ばして疾走していくエネルギーに、いつしか引き込まれている。特に番号が後ろに行くにつれていい。4番の一楽章や終楽章など、力強い推進力に輝いていて、これだけすがすがしいブラームスは久しぶりであった。
 
 私にとって大阪は、いまだ未知の文化大陸である。次にどんなものが出てくるのだろうか。期待して待ちたい。


クラシックジャーナル 020 CDオーケストラ曲
推薦度 ★★ 安田 寛


 二〇〇五年の十一月三日と二十日に、神戸新聞松方ホールで行われた、ブラームスの交響曲ツィクルスのライヴ録音。ブラームスの交響曲は、完成時期によって二つのグループに分けることができる。すなわち、一八七六年に完成を見た第一とその翌年に完成した第二が第一グループ、第二の完成から六年後の八三年完成の第三と、その翌年に着手され、八五年に初演された第四が第二グループである。とはいえ、音楽史の相対的観点の領域からブラームスの四つの交響曲の史的位置を見ると、四作品に共通する史的発展性、さらにはそこに認められる音楽的主張の史的関連性の一貫性から、史的区分としては四曲でひとまとまりと考えて差し支えないし、その方が都合が良い場合もある。そのことは、ライナー・ノーツでも指摘されているが、海外ではブラームスの交響曲ツィクルス演奏会が、そうすることが半ば必然であるかのように、なんら珍しくはないことからも裏付けられよう。しかし、それが、日本では数例を除いてほとんど行われたことがなく、ここに日本の音楽シーンの限界を垣間見るようである。
 したがって、日本のオーケストラは、ブラームスの交響曲をたった四曲ではあっても、(体力的・精神的に)短期間で全曲演奏することには慣れていない。まして、仕事として割り切って中途半端な形でなく、充分満足のゆく形で完遂しようとなると、並大抵の取り組み方では痛い目にあうこと必至である。湯浅は、大阪センチュリー響の全五十五名という中規模オーケストラの機動力を十二分に活かし、大胆な積極性で音楽を運ぶ。圧倒的な表現力の豊かさに担保された喚起力豊かな演奏ぶりにより、聴き終わった後も強烈に印象に残る。近接した録音は、オン・マイク気味で奥行きや空間性に乏しいが、低音に重点がおかれたピラミッド型のマッシヴな音響構造が、その印象に拍車をかける。
 第一の両端楽章は力強く訴求力のある表現で、説得力も充分。全曲にもいえることだが、冒頭から終結まで、ティンパニーにスポットライトが当たった録音バランスは印象的。第二番、第三番はやや解釈に曖昧さを遺すも、活気あふれるクライマックスの数々は、確信に満ちている。四曲中もっとも素晴らしいのは第四番である。華麗さと洗練、妥協しない解釈の凄まじい力には完全に脱帽する。


レコード芸術 '06 5月号 新譜月評 交響曲(小石忠男)

【推薦】昨年11月、湯浅卓雄は大阪センチュリー交響楽団を指揮して、神戸新聞松方ホールで2回のブラームス・ツィクルスを開催した。ナクソス録音の日本の現代音楽で名声を高めた湯浅だが、彼としてもブラームスの4曲を一挙に演奏するという試みは珍しく、その音楽的な真価を問うこととなった。コンサートのライブ録音だが、リテイクは一切行なわれていないという。すなわち舞台での演奏そのままの姿が収録されている。
 演奏はいずれも鮮烈な表現である。湯浅が現代の音楽でなく、古典における真骨頂を示したものといえるが、4曲のそれぞれの特性がみごとに描かれている。もちろん、このような企画であるから反復もすべて実行され、第1番では序奏から堂々とした求心力が発揮されている。響きもしぶく、密度が高い。主部のテンポも実に妥当であり、情感ゆたかな音楽が展開されている。このオーケストラは画然とした合奏美を特筆したいが、湯浅の示すアーティキュレーションは明快をきわめ、すばらしく真摯な表現をつくる。彼のブラームスではイン・テンポの効果も特筆しておきたい。
 第2楽章の叙情性ゆたかな表現もブラームスの真髄に触れた印象が強い。そこには深みと立体感があり、しなやかな旋律線の息づきがまったく自然である。オーケストラも好演で、ヴァイオリン・ソロなど実に清潔である。ここでは現代音楽で聴けなかった湯浅の、ゆとりある側面が示されている。第3楽章の歌にも余裕があり、細部の処理も上々といえる。
 劇的な終楽章は各部にたっぷりとした思い入れがあり、テンポと表情も作品に密着している。造形は堅固そのものだが、例の有名な主題は生き生きとして活力にあふれ、核心を衝いた表情が聴き手を説得してやまない。まじめ一徹ともいえるが、それがブラームスの楽想をみごとに描き切っている。
 第2番も第1楽章では、冒頭から底光りするような低弦がアンサンブルを支えている。演奏は室内楽的といるほど純度が高い半面、歌謡性にもみちあふれており、それぞれの主題がデリケートなニュアンスをもって表出される。テンポにもまったく無理がなく、ゆとりにみちているのも大きな特色といえるが、これまたソナタ形式の構造を完全に掌握した堅固な造形である。しかもその内部からロマン的な情感が立ち昇ってくる。
 第2楽章も流動性がみごとな表現である。ホルンなど各楽器の演奏も美しく、弦の響きに独自のこくがあるのも好ましい。デューナミクやテンポの効果も内面的な共感をよく映している。
 第3楽章も精気にみちたリズムとテンポが有機的に処理されており、第1部の表情は不思議なほどやさしい。終楽章はアーティキュレーションが精確そのもので、全体の音構造が実に堅実にまとめられている。そこに圧倒的な力感と緊張感が生まれている。
 第3番もやはり室内楽のように緻密な表現である。運動性も強いが、オーケストラの規模が、ブラームスの当時に近いのも音楽的に成功している。リズムも快調で、第1楽章では主題が性格的に表現されている。ティンパニのアクセントも鋭いが、湯浅のスコアの読みが実に細かい結果である。
 第2楽章も2つの主題がおとなしいが、簡素な構成にふさわしい静かな流動性こそ称賛せねばなるまい。第3楽章の各旋律にはこくがあるが、そこにも内面的な共感が如実に示されている。
 そして第4楽章は作品の交響性を堂々と打ち出した演奏である。すべてが妥当といわねばなるまいが、確かに一分の隙もない構成力である。ときにはデューナミクの効果を含めて、解明しがたい表現が見受けられるのもおもしろい。
 第4番はこれも堅固といえようが、作品の古典性を尊重したため、情緒に溺れない、いわば知的な解釈である。響きはきりりと引き締まって実に芯が強いが、それでも音楽は伸びやかに流動している。リズムとアンサンブルが精緻このうえない演奏に直結している。
第2楽章はホルンや木管が非常に巧みで、オーケストラの質のよさをあらわしている。第2主題も非常に魅力的で、全体に内面からふつふつと音楽が湧き出る感が強い。ヴィブラートのかかった表情など、まるで人の声を聴くようでもある。第3楽章はシンフォニックであり、推進力が強いが、ここではティンパニもまったく威風堂々としている。
 そして終楽章は当然バロックの影響を実感させる構築だが、各部がスムーズに流れることで、内面の情感が明晰に浮かび、大きな起伏がそれに拍車を掛けている。それにしてもここでのアンサンブルのまろやかさは、やはり湯浅ならではのものである。
 これはブラームス演奏のスタンダードとして長く手元におきたい集成である。



音楽現代 '06 5月号 交響曲 推薦盤
(諏訪節生)

【推薦】昨年11月3日と20日のライヴ録音。湯浅の明晰なアプローチが燦然と輝く全集になった。響きが実に細密に彫琢されている。それは、まるで織物のように精緻に織り込まれ、丁寧に仕上げられている。また、その中でハッとするような内声の鮮やかな扱いも湯浅の鋭敏な感覚を強く感じさせる。抜群のキレの良さと無理のない造形性、雰囲気や情緒に流されることのない、明快な響きの構築性も雄弁。第1番はモッサリしたヤニっぽさが全くない。両端楽章は引き締まった緊張感に貫かれている。第2番の、常に底流にある仄かな翳は、“イギリスの指揮者”を感じさせてたまらない魅力。第3番第2楽章、風にたなびく布のように描き込まれた明暗の微細な襞が秀逸。第4番は最高のできで、特に第4楽章は、精緻な表現と、強く訴えかける内面性が渾然一体、強烈に胸を打つ。センチュリー響は魅力的な表情を聴かせ、ライヴならではの緊張感と集中力を終始失わず素晴らしい演奏だ。


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